広場恐怖症治療にゲームを活用する研究プロジェクト -オーストラリア・マッコーリー大学-

 学校の試験や職場のプレッシャー、人間関係のストレスなどが引き金となって、人が多く集まる場所や、その場からの退避が困難な場所で突然恐怖を感じてパニックに陥ってしまう「広場恐怖症」。この病気の治療に、バーチャルリアリティのゲームを活用しようという研究がオーストラリアのマッコーリー大学で行われている。

 このゲームでは、患者は特殊なヘッドマウントディスプレイを装着してゲームをプレイすることになる。ディスプレイには、通勤客でごったがえす地下鉄の駅や、逃げ場の無い長いつり橋、買い物客で混雑するスーパーマーケットといった、広場恐怖症の症状が発生しやすい場面がバーチャルリアリティ技術で映し出され、患者はこれらの場面を疑似体験しながら、それぞれどのように対処して克服していくのかを学べるようになっている。

 この研究プロジェクトの責任者の Eric Malbos さんによると、広場恐怖症を克服するための一番効果的な方法は、自分が恐怖と感じる場面を恐怖心が取り除かれるまで繰り返し体験することだという。

 その点、バーチャルの世界で患者がそれぞれ恐怖と感じる場面を自由に作り出し、オフィスや自宅などのプライベートな空間でいつでも好きな時に好きなだけ治療が行えるこのゲームは、非常に優れた治療器具といえるだろう。

 このプロジェクトの実験協力者の一人である Jenna Tregarthen さんも、全体のうちの60%の段階までテストを終了した時点で、既に自分の中で恐怖を克服するための手ごたえを感じることができているそうだ。

 Ericさんによると、このゲームは広場恐怖症以外にも、対人恐怖症やパニック障害など様々な社会不安障害に効果が期待できると考えており、今後もより多くの患者に実験に参加してもらい、臨床データを蓄積していきたいという。

情報ソース:Virtual reality game helps agoraphobics step outside their comfort zone

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