消え行くコンピューターゲームを後世に残そう -デジタルデータ保存という人類の新しい挑戦-

 20世紀後半に誕生して以降、子供から大人まで世界中の人に親しまれ、今やひとつの文化となりつつある「コンピューターゲーム」。この人類共通の財産を後世に残そうと、現在世界各地で様々な保存プロジェクトが進行している。

 アメリカ・イリノイ大学が中心となって進めている「Preserving Virtual Worlds」プロジェクトもそのひとつで、ゲームデータを保存するための共通プラットフォームの策定や、数十年前の古いゲームデータのリスト化などを精力的に行っている。

 このような動きがある一方で、文化財保存学的な見地からは、ゲームをはじめとするデジタルデータの有効的な保存方法は未だ確立されておらず、この活動自体を疑問視する声もあがっている。

↓Preserving Virtual Worlds プロジェクトページ。イリノイ大学の他、スタンフォード大学セカンドライフの開発元であるリンデン・ラボ社も参加している。

 デジタルデータは複製(コピー)や記録が容易であるので一見保存が簡単だと思われがちだが、実は数百年〜数千年という長い年月で考えたときに、これほど保存の難しいコンテンツはない。その理由には、HDDやDVDなどの記録メディアの短い寿命、著作権と複製の問題、ゲームメーカーの倒産による著作権者の行方不明、エミュレーターなどの再生技術自体の陳腐化など、従来の絵画や音楽(楽譜)、建築物などの文化財の保存技術が全く通用しない数多くの問題があり、プロジェクト担当者の頭を悩ませ続けているのだ。

 また最近では、従来の1人でプレイするタイプのゲームに加えて、オンラインゲームやソーシャルゲームなど、人との交流があってはじめて面白さが成り立つゲームも出てきており、そういったコンテンツをどのようにアーカイブとして保存するのかという問題も出てきている。

ネクステックのダークアイズ。果たしてその存在を知っている人が日本でどれだけ残っているのだろうか・・・

 筆者も1999年ごろに国産初のMMORPGといわれるダークアイズというゲームにはまった経験があるのだが、現在はGoogleイメージでゲーム画面の画像を探すのでさえ難しくなってしまっている。ゲーム自体も既に運営が終了しており、ゲームサーバーも停止(というかプログラムすら残っていないのではないか・・・)という状態で、今やダークアイズの痕跡が残るのは自分の思い出の中だけという状況だ。

 これから数百年後に間違いなく歴史的な娯楽文化革命のピリオドとして語られることになるであろう現代のゲームが、果たして未来の人たちにどのようなかたちで受け継がれるのか楽しみでもあり、ちょっと心配でもある。

情報ソース:http://pvw.illinois.edu/pvw/

参考文献:コンピュータゲームアーカイブの現状と課題 後藤 敏行 著