カブールのゲーセンに集まる子供たち -戦争が残した傷跡-


 アフガニスタンの首都カブールの旧市街。様々な露店が立ち並ぶバザーの一角に古びれた小屋がある。看板やポスターなどは一切無く、中から漏れ出す独特の重低音サウンドだけが、ここがゲームセンターであることを教えてくれる。

 店の中に入ってみる。天井には白黒テレビが一台吊り下げられ、その下には奇妙な格好をした日本人兵士の等身大ポスターが貼ってある。そして壊れかけた壁にもたれかかるように旧世代のゲーム筐体がずらりと立ち並び、シューティング、格闘、サッカーゲームなど、いずれも10年以上前のゲームタイトルを夢中で遊ぶ少年たちで店内はごった返している。

 ここが、カブールの子供たちが現実から逃避できる唯一の安らぎの場だ。

「(ストリートの物乞いに)疲れたらいつもここに来るんだ」

 娯楽映像やコンテンツを一切禁止しているタリバンの教義を理解し受け入れるのにはまだ早すぎるであろう、14歳の少年は、そう言いながら夢中でゲームのコントロールレバーを動かし続ける。

「ここには盗みを働くやつもいないし、シンナーで遊ぶやつもいない。子供たちにとって安全な場所なんだ」と、少年たちを見ながらゲームセンターの店主は言う。

 アフガニスタンでは、カブール市内を中心に数十万人のストリートチルドレンが路上生活を送っているといわれている。彼らの多くは30年も続く内戦で両親を失った上に、地雷で傷ついたり麻薬中毒に苦しむ家族を助けるために、ストリートで物乞いなどして収入を得ている。

「戦争の中で育った暴力しか知らない今の子供たちにとって、ゲームは唯一、このつらい世の中で自分が生きていくことの意味を教えてくれる存在なのかもしれない」と、店主は続けた。

「もうストリートには戻りたくない。このままずっとここにいたいよ」

 ゲーム画面をじっと見つめたまま、少年はそうつぶやいた。

情報ソース:Escaping war zone at the video arcade - CSMonitor.com