人殺しのアイデア大募集! ゲームキャンペーンが与える社会への影響

Gamasutra - Opinion: We Should Never Ask Fans To 'Design A Kill'

残虐でリアルなゲームコンテンツ描写で、日本を含めて一部の国では発売禁止になるなど様々な物議をかもしているEA(エレクトロニック・アーツ)のSFサバイバルホラーゲーム「DEAD SPACE(絶命異次元)」。

その続編であり年内の発売が予定されている「DEAD SPACE2」で行われているキャンペーンが今、ゲームプレイヤーコミュニティの間でちょっとした議論の的になっている。


(※DEAD SPACEの世界では死体にエイリアンが転移してプレイヤーを襲うこともあるため死体処理も重要なプレイ要素になる)

そのキャンペーンは「design a kill」という名称で呼ばれており、直訳すると「殺しを考える」。
つまり、ゲーム内でエイリアンを殺すためのアイデアを公募しようというわけだ。
イデアの採用者には、自分のアバターNPCとしてゲームに登場するというファンにとっては大変栄誉な特典もついてくる。

このキャンペーン、開始後の1週間で1000件以上のアイデアが集まるなどかなり盛り上がっている様子だが、その一方では「人殺しの方法を募集するなんて許せない!」という反対の声も上がっているようだ。


(※応募作品のひとつ。頭にひざ蹴りを食らわせます(^^ とスマイルマーク付きでエイリアンの殺し方が解説されている)

海外大手ゲームメディアのGAMASUTRAでもこのキャンペーンについての記事がポストされ30件以上のコメントが集まるなど議論が盛り上がっている。
Gamasutra - Opinion: We Should Never Ask Fans To 'Design A Kill'

この記事では記者であるBrandon Sheffield氏が、自身の個人的な意見であるとしながらも以下のように述べている。(以下要約抜粋)

暴力というのは我々の日常にも普通に存在するし、多くのゲームも暴力という要素をゲームの面白さとして取り入れている。
だが、こういったアイデアというのはゲームデザイナー自身が考えて、その面白さを世に問うものであり、プレイヤーに「暴力」と「面白さ」を結びつけるための思考を要求するのは荷が重過ぎるのではないか。

「人殺しのアイデアを考える」というとんでもなく非道徳な行いが、キャンペーンという名のもとにまるで面白くて楽しいものであるかのように行われており、既に1000件以上の「人殺しのアイデア」が、EA公式のFacebook上でファンのみならず一般人もが自由に閲覧できるようになっている。

ゲーム内の暴力が青少年の発育に与える影響などが社会的に取り上げられ、ゲーム業界にとっては肩身の狭い世の中においてこのようなキャンペーンはゲームに批判的な団体にとって格好の叩き材料になるだろう。

もしEAがこのキャンペーンを話題作りのために行ったのであればキャンペーンは成功といえるだろう。だが、「ある小学生がキャンペーンの応募の為にビデオを撮っていて弟を誤って殺してしまった」なんて事件が1件でも起きれば、それはゲーム業界全体にとってたちまち悪夢になるであろう。

ゲームの中で殺す相手はエイリアンであって人間ではないという声もあるが、見た目は人間そのものであり、それは人殺しのアイデアを募集していることとなんら変わりは無い。

全てのゲーム会社に今後このような軽率なキャンペーンを二度と行うことが無いよう強く警告したい。

日本でもオンラインゲームなどでゲーム内のアイテムのデザインを募集したり、ロールプレイングゲームでモンスターのアイデアを募集するといったことが広告・宣伝活動の一環として行われることがあるが、今回の騒動を通してこういったキャンペーンを行う際のリスクについてあらためて考えさせられることになりそうだ。